企画アイデアとストーリー作りに関する考察ブログ

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「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」から今後のシリーズ方向性を探る!

「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」から今後のシリーズ方向性を探る!

前回に引き続き「ザ・マミー」を取り上げる。
この作品は往年のユニバーサルモンスターを現代に蘇らせ、それぞれのキャラクターを同じ世界でクロスオーバーさせるという、マーベルに端を発し、DCが取り組んでいるIPクロスオーバーのまた新しいプロジェクトのひとつだ。

さて、今日は「ザ・マミー」鑑賞後に実はこの映画、結構深いテーマが流れているのではないかと考えるに至り、 いくつか思ったことを書きたいと思う。

ここからネタバレ注意!

この映画、ストーリーの骨子は前回のブログで上げた通り単純明快なトム・クルーズのヒーロー映画だ。
王女アマネットも5000年の時を経て野望を達成しようとするが、あえなく(というか予想通り)撃沈するわけである。
ただ、その背後には今後のシリーズを占う上で深い背景が隠されていると思われる。

クリスが物語の鍵を握る?

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まず、トムクルーズの友人である、ジェイク・ジョンソン演ずるクリスが一体誰の意思であの幽霊のような存在になったのかという疑問がスタートだった。
典型的ヒーローであるトム・クルーズと、典型的ヒロインであるアナベル・ウォーリスの間で、適度なユーモアとアドバイスをする狂言回しとして重要なキャラクターに思えるのだが、実はストーリー上は中途半端な立ち位置だ。

まずはクリスに関わるストーリーを時折ツッコミを入れつつおさらいしておこう。

クリスは遺跡でエジプトクモに刺されてしまい、それが悪化して飛行機の中で半ゾンビ状態となる。
ゾンビ状態のクリスはアマネットの意思によって棺を開けようとし、それを止めるニックを襲おうとして撃たれて死ぬ(この時、クリスは最初から死んでいたのか、トムクルーズに殺されたのかは明確になっていない)。
ていうか、そもそもこのシーンは必要なのか?
なぜならこの後、飛行機はアマネットの意思によって墜落するわけで、ここでクリスにこんな余計なことさせなくていいのだ。

それはそれとして飛行機墜落後クリスは、ニックの前に時折現れるようになる。
クリスはニックとともに王女の呪いにかけられ、彼女が望む希望を叶えない限り、平安はないと言う。
つまり成仏できずこの世にさまよう浮遊霊になったのだ。
そうか、アマネットに取り込まれて死んでいった者たちはこういう運命になるのだ。

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クリスは誰の意思でこんな存在になったのか


で、クリスはその後ニックにいろいろアドバイスしたり、解説したりする狂言回しの役回りになったのだけど、シナリオ上はあえてその役をクリスに担わせずとも、アマネットの口からいろいろ考えや意図を直接説明させたり、ラッセル・クロウからの説明でいろいろ補足できるわけで、説明キャラクターもこれだけいると観客は混乱するだろう。

そう考えると、そもそもクリスというキャラクター自体必要なかったのかもしれない。
更にクリスは最後、ニックによって生き返らせてもらっているのだ。これによってこの物語って主要3キャラクターが全員生き返ってしまうという、相当なご都合主義になっている。
そんな不自然な結果にするぐらいなら最初からクリスはいなくてもストーリーは成立するのだ。
まあ、ちょっとまぬけで笑わせるキャラクターを狂言回しに配置して、トムクルーズの魅力を高めたということであろう。

というところで、アマネットの意思も曖昧でトムクルーズは単なるご都合主義的典型的なヒーローなのだがシリーズ1作目がこれでよいのだろうか。

Soshakuの考えはこうだ。

物語の背景に壮大なテーマが隠されている?!
思い出してみると、遺跡からアマネットの棺を引き上げた後、砂嵐に追われる下りがある。
この時「神の怒りだ」というセリフがあったのだ。

この物語は一見、単なるご都合主義だし、今後のシリーズに破綻をきたさないか不安になるが、この物語及びシリーズの背景には壮大な神と悪との戦いがあるのではないかと思う。
この世の中にこれだけ人知を超えた悪の存在がモンスターという形で実在するという世界は、やはり「悪魔」と「神」という存在が悠久の戦いを繰り広げている、という構図が背景にあると推察してよいかと思う。

プロディジウム率いる、ラッセル・クロウ演じる「ジキルとハイド」 も神と悪魔のハイブリッドだし、ニック自身も神でも悪魔でも、そして人間でもない存在として終わる。

クリスも実は飛行機の中の「棺開けミッション」に失敗したことで本来はそのまま死んでしまって終わりなのだが、神の意志によってこの世にとどまらせ、ニックを助けるべくアドバイスさせたのではないか。
そう考えると、最後にいろいろ良い働きをしたクリスに対し「ご褒美」に生き返らせてあげた、という解釈も成り立つ。

更にトムクルーズはクライマックス、善と悪との間で葛藤があり、最後はヒロインへの愛のため善を貫き通して、最後は悪に支配されない永遠の生き神となる。
ということで、死んだものでさえ生き返らせることができる能力を持つ、つまりトムクルーズ最強説なのだが、神と悪魔の狭間で彼が今後のシリーズのキーになっていくことは間違いない。

さあ、第1作としてかなりの大風呂敷を広げてしまった「ダークユニバースシリーズ」は今後どのように展開していくのだろうか。
死んだものを生き返らせることができる能力がどうドラマ性を盛り上げ、物語の整合性をとっていくのだろうか。製作陣のお手並み拝見というところだ。

個人的な感想としては、トムクルーズがモンスターとなって終わるということで、第1作にして最強のダークヒーロー誕生というところにシビレた。
マーベルやDCユニバースが、テロや核など現実社会の複雑な情勢の中で翻弄されてしまっているのに対して「善とは何か。悪とは何か。」というシンプルにして根源的なところにテーマを置いていることで今後のシリーズも純粋に楽しめそうだ。Soshakuは期待しているよ!


最後に 今日の試験に出る ストーリーテリング
ストーリーの背景に、壮大なテーマが隠されている。長期的なクロスオーバー企画も根本は善と悪の戦いというシンプルなところからスタートしているのだ。

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こういう古代のミステリーを探る世界観は好きだ

ではまた。

 

ザ・マミー 呪われた砂漠の王女 (小学館文庫)

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