企画アイデアとストーリー作りに関する考察ブログ

創るとは、残すことに他ならない。日々接し、感じることが全て創造に繋がる。ここは、そんな自分が経験した出来事が作品に昇華されるまでの素材と過程を記していくブログです。

30秒でわかる:「シェイプ・オブ・ウォーター」俺たちのギレルモが大快挙!

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祝!

シェイプ・オブ・ウォーターがアカデミー作品賞、監督賞はじめ4部門を獲得する快挙!

 

この映画は間違いなくヘンタイによるヘンタイのためのヘンタイ映画だ(いい意味で)!

「ヘンタイ」を「オタク」に変えてもよい。

時代を間違えたらデビッド・リンチの「エレファントマン」と同じ運命だっただろう(ちなみにsoshakuはエレファントマンもデビッドリンチも大好きだ)。

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そんな愛すべきシェイプ・オブ・ウォーターのストーリーを一文で!

 

以下、ネタバレ注意!

 

1962年冷戦下のアメリカを舞台に、軍の極秘研究所に連れてこられ、残酷な実験材料にされていた半魚人を愛したヒロインが、周囲の協力を得て彼を研究所から逃し、そして共に海へ帰っていく話。

 

重要なのは、海へ「かえす」のではなく、海へ「帰る」のだ。

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この作品がアカデミー賞主要含む4部門を受賞したのは、この作品が大人のための恋愛ファンタジーであるとか、徹底した映像美であるとか、あの時代の、懐かしくも平和でありながら、弱者の生きにくい時代背景を生々しく描いたさまであるとか、様々な理由があると思うが、間違いなく言えるのは、一昔前までヘンタイ扱いされていたヘンタイ映画(これをオタク向け映画という)が市民権を得たということだ(異論反論受付中)。

 

なにせ、映画が始まって1分足らずで主人公のヒロインが全裸でマスターベーションに耽るわ、自分から服を脱いで半魚人を迫っていくわ、その半魚人とは突然ミュージカルになって踊るわ、研究所の悪玉所長がここまでかと思うほどの胸糞言動を繰り返すわで、ホント10年前なら確実にカルト映画扱いだろう。

ただ、観ていくうちに本当の変態は(ヘンタイでなく)その時代に息づいていた、差別に満ちた人々の偏見であり、国と国とのくだらない争いであり、そしてその怖さは、現代と紙一重であることに気づいていく。

また、半魚人を愛したヒロインに戸惑いつつも、彼女を理解し、協力するまわりのキャラクター達も魅力的だ。

彼らはゲイであったり有色人種であったりすることで差別や偏見に晒されており、半魚人を通して自分自身の境遇を嫌でも重ねることになり、彼らによる体制への反撃映画でもあるのだ。

まあ、アカデミー作品賞を取ったのも充分頷けるわけだが、実はギレルモ・デルトロが本当に描きたかったのはあの時代を背景にした、耽美に満ちた極彩色の怪奇とエロスの空想映画であることは想像に難くない(かつて彼は「ヘルボーイ」を撮っていたのだ)。

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後ろに「彼」いるじゃん!と思ったらまさかの同じ役者さんだった!

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ダグ・ジョーンズという役者さんだが、デルトロの作品には欠かせない存在

 

僕は彼のアカデミー賞受賞によってカルトやSFが世間に認められたことが嬉しいのだが、アカデミー賞受賞作ということで劇場に足を運んだ観客が、気持ち悪いと拒否反応を見せることもあるだろう。

だがそれは正しい反応だ。そもそも彼はカルト作家であり、一般の観客には少々刺激が強すぎるのだ。ただしオタクならではの様々なギミックやこだわりが随所に隠されているので、それらを探してみることで更に面白さが倍加することと思う。

soshakuとしてはアカデミー賞を取るより、一部のコアなファンのみが知る俺たちのギレルモであって欲しいという気持ちが少なからずあるのだが。

 

皆さんはどう感じただろうか。

 

本日の試験に出るストーリー作りの極意。

最強のストーリーテラーとは、人の気持ちを知ることのできるオタクである

 

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ギレルモ・デル・トロのシェイプ・オブ・ウォーター 混沌の時代に贈るおとぎ話

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シェイプ・オブ・ウォーター (竹書房文庫)

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ギレルモ・デル・トロ 創作ノート 驚異の部屋

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